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「いっそなぁ……、あの男に一服盛ってのしかかったらどうだ?
ポンポンポンっと服を剥ぎ取れば話は早いだろ」
「なっ、なんとはしたないことを!
そんな真似をしたら、狼藉者だと嫌われてしまいまする……っ」
「たまには趣向を変えるのも有りだぞ」
「わたくしには無しでございます……っ」
鬼の提案に、咲良は顔を真っ赤にして俯く。
「風呂場に乱入するのはどうだ?
あちらが何も身に付けておらねば、お前にも勝機はあるだろう?」
「なっ、なんということを!
それは最早お気持ちを聞き出すと言うよりも、単なる襲撃にございますっ!」
「お前な……。
日の本には古来からのちらりずむという文化があるのだぞ?
浴衣や襦袢が濡れて肌が透けて見えるのは、男の劣情をおおいにそそるもんだ」
「わたくしは聞いたことがござりませぬっ!」
半分からかいつつ、咲良が抱く思いを解析していく。
『面白いな。
腹の皮が捩れそうだ……』
クスクス笑いながら次の一手を考える。
中性的な姿も感情豊かな瞳も、耳障りの良い声も、全てが鬼の血を騒がせるものだ。
自分がそうなのだから、同族に連なり咲良の対になった守弥も満更ではない筈。
いや、劣情に任せて組み敷かぬように、必死で堪えているかもしれない。
『据え膳は何とかではないが、日々自分好みに育つ対に手を出さずに我慢させるのも酷だしなぁ……。
いっそこっちの箍を外してやった方が早いかもしれんな』
頬を膨らませる咲良の頭を撫でてやり、鬼は懐から小さな包みを取り出した。
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