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蜜夜

大祭の後片付けも終わり、両親と弟妹たちは、夕飯もそこそこに済ませて咲良を構い倒そうとした。 …………が。 「病み上がりに無茶をさせるな」 守弥がガッチリとホールドして睨みをきかせる。 「う、うしゃこぉ……」 「咲良ちゃん、お母さんのお膝に……っ」 「ね、ね、ほっぺすりすりしよっ!」 「………………、あ、あの…………」 腰に回された手と守弥、総ウェルカムの家族を交互に見る。 いつもならあっさりほどいてくれるが、今日はその気配がない。 抜け出せなくもないが、それをするのが何となく憚られる。 「…………あ、あの……」 「病み上がりだろ」 「…………………………はい……」 「「えええ~~~っ!」」 おとなしく従う咲良に、両親も弟妹たちもがっくりと肩を落とした。 「にーちゃんばっかりズ~ル~い~。 うしゃことハグしたいよぅ」 「うう……。うしゃこぉ……」 「にーちゃんの意地悪……」 一晩で背が伸び、ますます中性的な容姿になった咲良。 夕方まで我慢していたのに、熱が下がっても触れられないとは……。 「にーちゃん、少しだけ手ぇ緩めてくんないかなー」 「そうよ。ほんの少しだけ……」 咲良の腰に回された手を、守弥の母がどかそうとした瞬間。 てし。 「へ……?」 「は、はわ……?」 反射的に阻んだのは、咲良の手であった。

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