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床にぽつねんと残された下着。 それは咲良のものだった。 「……………………?」 普段の咲良は服を脱ぎ散らかして行ったりはしない。 床に落ちていたのは、洗濯が済んだものだ。 「穿き忘れか……? スカスカするだろうに」 突っ込む所はそこではないのだが、平素の咲良からは想像がつかない。 慌てて風呂から上がったようだし、もしかしたら急に体調が悪くなったのだろうか……。 ガシガシと簡単に髪の水分を飛ばし、浴衣を着て脱衣所を後にする。 「っと、一応水分も持ってくか」 冷えたものと常温のペットボトルを持ち、部屋に向かう。 居間や縁側、石庭も見て回り、フラフラと歩き回っていないか確認してからドアを開けた。 「咲良?いるのか?」 声をかけるが、返事はない。 薄暗い部屋の奥、寝台の上でタオルケットにくるまった咲良を見つけて、そっと息をつく。 「…………咲良?」 一瞬、ピクリと反応したような気がするが、あまりつつき回すのは躊躇われる。 ベッド際のライトを抑えめにして点けた。 「咲良。具合が良くないのか?」 「………………っ、……っ」 息を飲む気配。 「顔を見せろ」 「…………っや……っ」 きゅううっとタオルケットを引く。 「………………咲良、具合が良くないなら……」 「大丈夫でございます……っ、なん……とも……、う……っ」 「…………!なんともない訳があるか! ほら、顔を見せろ!」 「ひゃ……っ!」 ガバッと引き剥がされたタオルケットの下から現れたのは、肌を朱に染めた咲良であった。

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