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唇を啄まれただけで、体内の熱が一気にうねる。 「んーッ、…………っふ、うぅぅう~~~っ!」 一生懸命腕の中から抜けようとするのだが、どんどん力が抜けていく。 「っ、やっ、………………っ、………や…っ」 「暴れるな……鎮めるだけだ」 「やっ、お離しくださいませ……っ」 「こら、暴れるなと言うのに……」 「嫌われるのが分かって、大人しくする訳にはいきませぬぅ……っ、こんな……っ、こんなのは水ごりをすれば収まりまする……っ」 「こんな夜遅くに水ごりなんかしたら、熱がぶり返すくらいじゃ済まないだろ。 大丈夫だ、落ちて怪我をするから……。ああ、こらっ、大人しくしとけ」 「やあああ……っ!」 じたばた暴れる内に、浴衣の裾が乱れてきた。 それすらも恥ずかしくて仕方ないのに、守弥は離してくれない。 「お離しくださいませ……っ、お願いにございます……っ」 「駄目だ」 「嫌……っ、やあぁ……っ。 こんな…っ、はしたないところを見られたら……っ、嫌われてしまったら、わたくしは生きてはいられませぬ……っ」 「大丈夫だ。 このくらいで嫌いになんかならない」 額同士を触れ合わせ、守弥が言い聞かせる。 「でも……、でも……っ」 「お前に幻滅なんかしない。 寧ろ、俺が幻滅されないかと思ってるくらいだ」 「幻滅いたしませぬ……っ、わたくしは……決して幻滅など……っ」 「そうか? なら、暴れないでくれ」 「…………?」 「拒否されたらヘコむ」 「……………………ふえ?」 「目茶苦茶ヘコむし、悲しい」 「え、あ、あう?」 「鎮めたいだけなんだ。 拒否されたら………………物凄く落ち込む」 「………………っ、あ、……ぅ…………」 目の前の守弥が耳をヘニャリと伏せて悄々と項垂れる大型犬に見えて、咲良は押し止めていた手を下ろした。

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