541 / 668

黒い桜の痣が消えた白磁の肌がうっすらと染まり始めている。 文字通り、匂い立つように。 以前は痣があったから多少強めに口づけても大丈夫だったのだが。 皮膚の薄い肌を強く吸えば、今は簡単に痕がついてしまう。 咲良に余計な手出しが出来ぬように牽制をする目的であれば、態と痕をつけることも有りだが、まだ式を挙げてもいない状況ではあまり好ましくもない。 敏い時雨は気づかない振りをしてくれるだろうが、宮に住まう付喪神達が放っておいてはくれないだろう。 軽いからかい程度で済めば良いが、度が過ぎれば咲良が困惑してしまう。それは避けておきたい。 途中で宮司が席を外したということは、近いうちに咲良の親きょうだいがこちらに訪れる可能性もある。 可能性が特に高いのは姉の咲耶だ。 咲良に聞いた感じでは弟想いで少し気の強い姉という印象であったが、宮司の説明では結構な鉄砲玉タイプらしい。 守弥の姉達に似ているなら、厄介この上ない。 『……手加減はしておこうか…』 首筋に痕を付けぬように気遣う分、ほんのり色づいた胸の粒をやわやわと責め立ててやる。 チュッ。 「あっ、……っ、んゃ、…っ」 緩めた袷から覗く淡い色の蕾を軽く吸うと、咲良が背中を浮かせて息を詰まらせた。 チュ、チュ。かりり。 「ひ、ぁ…っ、……っは、…あっ」 露になっている粒は口に含まれ舌先で、身頃で隠れている方は指の腹で転がすように触れられて…。 でも、決して痛みを伴うような触れ方ではなく、むしろ優しく咲良を追い上げるような触れ方だ。 「あっ、あっ、……っ、んゃ、…」 はくはくと喘ぐ口から漏れる声がどんどん甘さを増していく。 口を手で押さえてみても、鼻に抜ける声は上擦ったまま。 はしたないと思われないだろうかと咲良は案じているが、その声自体が守弥を駆り立ててしまっているのだと気づいてすらいない。 「ん、や、ぁう…っ」 ただの飾りのような物なのに、守弥に触れられるだけで息が上がっていくのを咲良は止められずにいた。

ともだちにシェアしよう!