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ただの飾り。 ただそこにあるだけのもの。 そう思っていたのに、触れられるだけで息が上がり、体が内側から熱を帯びていく。 触れ方は前と同じ…いや、前よりも優しい。 優しいというより、労るようで…。 まるで壊れ物を扱うように恭しくて、咲良の鼓動は逸るばかりだ。 『そんな…っ、そのように慈しむように触れられたら…、わたくし…っ、もうどうしたら良いのでしょう…っ。 あああ…っ、反則でございまするぅ…っ』 一生懸命堪えようとすればするほど、体内で熱が畝ってしかたがない。 「我慢しなくていいし、変に堪えたりするな」 「な、なれど…」 「いきなりやれと言われても困るだろうから、少しずつな。 春になるまでに、徐々に慣れていってくれればいい」 「……っ、は、はい…」 春…、雪が消えて枝垂れ桜が満開になる頃に式を挙げるのだと湯殿で聞かされたのを思い出す。 半年ほどしかないから、それなりに準備をせねばならないと。 それは、式次第や衣装、小道具だけではない。 咲良自身が、守弥だけのものになる準備も含まれているのだと………。 「もう、とうに、わたくしは守弥さまだけのものですのに…」 「まだまだ、な」 クスリと笑う息すらも肌に熱をもたらして、華奢な体が跳ねる。 「………っ、ひぁ、…っ、ぁっ」 胸を責めていた手が脇腹から腰へと滑り、解放された粒は口に含まれた。 「んっ、ゃ…っ」 「堪えるな。流れに乗れ」 「は…っ、う…ぅ」 どんなに快楽を堪えようとしても、熱のうねりは止めようがなかった。

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