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チュ。 「…………んう……?」 額に口づけを落とすと、長い睫毛が震えた。 チュ、チュ……。 額から瞼へと移していく。 それだけで、咲良は甘い吐息をこぼす。 「咲良」 「んぅ……」 「大丈夫か……?」 「んン…………」 意識が半分飛んだままだからか、普段の無防備さに色香が加味されてしまっている。 それが守弥の下腹に熱を籠らせているなど、当の咲良は気づいてはいない。 『………………入籍するまで俺の理性が持つんだろうか……』 今、最後まで事を進めることは憚られる。 此方では男女ともに16歳で婚姻が認められるが、咲良の世界では婚姻が可能な年齢が違うらしい。 落ち着いたところできっちり納得してもらい、甘噛みを交わして婚約も成立させねばならない。 それに、漸く年頃まで成長が追い付いたところで、変に拗らせたくもない。 『………………あと半年、堪えが利くんだろうか……。 いっそ、形だけの養子縁組みを先にしてもらう方が早いか……?』 熱を散らすために考えをあれこれ巡らせるが、一向に散らない。 それどころか、どんどん熱が集中してくる。 二次性徴の種明かしをして、本人に納得して貰えばそれでいい……筈。 『ヤバイな……。 これはまずい……。 こんなものを見たら怖じ気づくかドン引きするぞ。 鎮まれ……、勃つな……。耐えろ俺……!』 風呂上がりの咲良が自分に言い聞かせたように、今度は守弥が自己暗示をかける羽目に陥っていた。

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