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「へう……?」 額や瞼、こめかみへと落とされていた口づけが止んだ。 守弥がくれる口づけは、いつも優しく労るようで咲良の心を浮き立たせてくれる。 今日のは少し違って、体の中に熱を点して……。 「………………?」 熱。 そのキーワードで、パチリと目が覚めた。 「…………っ!」 「ふに?」 唇と唇が触れるくらいの位置で守弥が息を飲んだ気配がする。 「守弥さま……?」 「う、あ、あ、……っ、だ、大丈夫、か?」 「は、はい……、………………?」 何故だろう。 いつもとは違う狼狽えた表情。 意識が真っ白に塗りつぶされるまでの事を、咲良は一生懸命に思い出す。 「……………………?………………………………」 変に湯中りをして部屋まで駆けてきた。 体が疼いて、下腹のあたりがおかしくなって。 浴衣の下で…………。 それから、風呂上がりの守弥に抱っこされながら……。 「…………………………っ! わっ、わたくし、……わたくしはっ、なんてことを……っ!」 「さ、咲良?」 「わたくし、なんてことを……っ!」 蕩けるような余韻が一気に弾け飛び、とんでもないことをしてしまったことに頭が真っ白になる。 羞恥のあまりに体温が一気にあがり、顔も熱い。 鼓動も早くなって血の気が引いた。 「咲良、落ち着け。大丈夫だから」 「はわ……、はわわわ……」 「咲良?」 「わたくし、わたくし……っ、粗相を……っ! ひあああ!」 お互いに取り乱す守弥と咲良なのだった。

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