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「あ、あのな、咲良、少し落ち着け」 「でも……っ、でもっ」 「あれは粗相じゃないから、取り敢えず落ち着け」 「でも、わたくしは……っ」 半泣きの咲良をどう宥めたものか……。 「……っ、っく……?」 落ち着けるように体勢を変えてやり、軽く唇を啄む。 チュ。 ……チュ。 「んに……」 チュ。 「………………っふ……」 驚くほど素直に咲良の力が抜けていく。 強ばりが解けるのを待ち、守弥は軽い啄みを繰り返す。 「…………大丈夫だ」 「んに…………」 「俺が怒ったりしてないだろう?」 「んぅ…………」 「な?」 「…………んうぅ……」 咲良が落ち着くまで辛抱強く待つ。 「うう……。 申し訳ありませぬぅ……」 「大丈夫だ。 咲良はなにも悪くない」 「んう……」 瞼やこめかみに口づけを落とすと、擽ったそうに身を捩る。 「わたくしは……どうなってしまったのですか……?」 「ん?」 「あのように熱を持ったのは初めてでございまする。 わたくしは、何処かが……おかしくなってしまったのでしょうか……」 「おかしくなんかない。 漸く体の成長が追い付いただけだ。 年頃の男子なら、当たり前の変化が訪れただけでな」 「当たり……前の……?」 「ああ。 普通のことだ。確認するか?」 「…………はい……っ」 コクコクと頷く咲良の額に、守弥は口づけを一つおとした。

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