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「男子も大人の体になる準備が始まる。 …………12歳から14歳くらい……だったか」 「大人の体に……?」 「ああ。 女子の方が少し早いかもしれないな。 咲耶もいきなり大人っぽくなったことがなかったか?」 「こざいました。 たしか、母がお赤飯を炊いたからとお裾分けを……。 11歳になるすこし前に……」 「それと同じように、男子も大人の体になる準備が始まる。 お前はずっと小さいままで来たから、今、それが来たんだ」 「…………わたくしが、大人の体に……?」 目を丸くして守弥を見詰める咲良。 岩屋の中で死ぬ定めだった自分が大人になろうとしていることに、驚きを隠せないでいる。 「咲耶は毎月、月の障りが訪れると……。 男子は…………、男子はどうなるのでしょう」 「そこがキモだな。 男子は下腹に熱が渦巻く。 さっきのお前と同じようになる」 「…………っ?」 「そう。 さっきのあれは、大人の体になり始めた証だ。 熱が渦巻いて、体が甘く痺れたりする。 あれは普通のことだ」 「……普通の……こと……?」 「ああ」 落ち着きを取り戻した咲良に、守弥は順を追って説明していく。 先程守弥がしたことも。 「ずっと体が熱く疼くのは苦しいからな、それで……」 「そうなのですね……? では、わたくしが、…………その……粗相をしてしまったのは……」 「あれは粗相じゃない。お前の中の熱だ」 「わたくしの……熱……」 「見てみるか?」 「………はい…っ」 少量の液体を受け止めた右手を、守弥はゆっくり差し出す。 「これが、わたくしの中に……? わたくしの熱……?」 「そうだ。 お前が初めてこぼした熱だ」 「わたくしはてっきり……お漏らしをしたのだと……」 「全然違う物だろう? これはな、穢らわしいものではないんだ。 お前の成長の一つ。 喜ばしいものだ」 「ひああっ!」 薄い色のそれを、守弥はペロリと舐め取った。 咲良に見せつけるように。

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