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「あとで処理しようと思ってたんだが、気づいてしまったか……」 「………………へ?」 自嘲気味に呟く守弥を、咲良は不思議そうに見上げた。 「初めての放熱をしたら、大体の種明かしをして終わるつもりだったんだが、な」 「…………なにゆえ、…………?」 「漸く第二次性徴を迎えた所で、俺が欲情したのを見て恐怖を持たれるのは本意じゃないからな」 「………………よく、じょう……?」 言葉が漢字に変換出来ずに咲良は戸惑う。 「よく、じょう……?」 「ああ。 とっくの昔に、俺はお前を欲望の対象にしてた。 それに気付かれたら、きっとお前は怯えるか逃げるかするだろう?」 「………………?」 守弥が浴衣ごしに、そうっと心臓の真上の黒い痣に触れる。 代わりに、咲良の手を自分の心臓の上に当てさせた。 「咲良、聞いていいか?」 「…………は……い……」 「お前の……ここにある、俺へと向けられている気持ちは、何だ?」 「…………っ、……そ、尊敬と……、信頼と…………………………………っ、………それから……、………」 「ん。 大丈夫だ。ゆっくりでいい。少しずつ掘り出してくれ」 「えうう……」 心を射抜くように真っ直ぐ見つめられて、ドクリと血脈が逆巻く。 正直に心を明かさねばならないのだと思うと、鼓動がどんどん激しくなっていく。 「………す、…………っ、す……っ、………好き……です…………。 友愛の気持ちや、家族としての…………好き…では、なく……て、身も…………心、も……、魂も、全部……、全部が、……どうにかなってしまうくらいに、……守弥さまを、…………わたくしは、守弥さまだけを…………。 お慕い、申し上げて……、おりまする……っ」 言った。 とうとう、言ってしまった。 咲耶の大事な対の鬼だというのに。 心を明かしてしまった。 「咲良」 怖い。 怖い……! きっと、守弥は……、呆れてしまう……。 そう思い、ギュウっと目を瞑った。

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