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「ふえ……?」 「約定を交わそう」 かり……。 やわやわと耳殻が噛まれて、下腹へ熱が篭る。 「やく……じょう……?」 約束ごとならば、小さいころによくしていたアレだろうか……? 「指切りでございまするか……?」 右手を差し出すと、守弥が目を細める。 「……………それもありだが、少し違う。 昨日したアレを覚えてるか?」 「………………? …………!まさか、………………対の甘噛み……を?」 「ああ」 「……で、も…………、それは、咲耶が……」 「もう俺は対を選んでる。 他の誰もお前の代わりにはならないし、なれない」 「…………っ」 凛々しい顔が間近にあり、真剣な眼差しは咲良だけを捉えている。 「鬼の甘噛みは、深いところまで刻まれる。 対の姫から噛み返して貰えば、身も心も魂魄にまで……」 「……………………そこまで……深く……?」 「ああ。 文字通り二世を誓う行為だ。 次も……その次にも、繋がる」 「そん……なに……?」 目を丸くする咲良に、守弥は口づけをひとつ落とす。 「嫌か? 生まれてくる度に俺と対になるのは……」 「っ、嫌などと思いませぬっ。 決してそのように思いませぬ……っ」 「なら、俺の甘噛みに、噛み返しをしてくれるな?」 「…………っ、……っ」 言質をきっちり取られて、咲良にはもう逃げは許されない。 「受け入れてくれるな?」 「………………っ、………………っ、は………………ぃ……」 俯いて応えると、額に口づけが落とされた。

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