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ぴり……ぴり……。 噛まれた部分から、甘い痺れが広がる。 昨夜噛まれた時とは違う、じわじわと広がる痺れ。 「大丈夫か?」 「はうぅ…………っ」 気遣うように唇へ触れた指。 それすらも、咲良の中に不思議な熱を点していく。 「んぅ……、っ、…………ぁ」 点された熱が連なり、うねる。 心の臓がキュウキュウと軋む。 これはなんなのだろう……。 「咲良」 「ん………」 鼻腔を満たす香り。 耳殻に響く声。 肌を粟立たせる指の感触。 すべてが咲良の中の痺れと熱を増幅していく。 「辛いか……?大丈夫か?」 「…………はぁ……う……」 こんなに甘い声が口から漏れてしまうなんて……。 恥ずかしくて仕方ない。 ……でも。 「咲良……?」 気遣わしげに覗き込む守弥の表情が、少しずつ甘さを増している気がする。 「大事……ございませぬ……。 昨夜のような辛さは……ありませぬ……ゆえ……」 「そうか……?」 「はい……」 夢現の境にある咲良。 噛んだ場所に蔓バラは現れない。 代わりに、咲良の肌の香りが守弥の中の熱を煽り出す。 明らかに昨日とは違う。 「……………ぁぅ……」 熱を帯びた手が守弥の背中に回されて、甘い吐息が首筋に当たる。 「咲良、出来るな?」 「んぅ……」 はくり。 「…………っ」 そろり。 「………………ッ」 熱い吐息を伴う噛み返し。 一気に守弥の中の熱が灼熱のうねりに変わった。

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