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咲良が零した熱。
それを守弥がそっと嚥下した。
「は…うぅ……」
達した余韻が残ってフルンと震えている体。
整わない息ではくはくとしながら、咲良が抗議の声を漏らした。
「…飲、んでは…嫌と…」
「すまんな。つい」
「いつか、…胃の腑に穴が開きまする…」
「こんなふうに俺を案じてくれるお前が溢したのに、穴が開く訳がないだろ」
「……ぅう…」
サイドテーブルに置かれた水を飲み、口元をぬぐう。
「さっきのは粗相じゃない。
渦巻いた熱が零れるのは寧ろ普通だ」
「なれど…」
「婚儀が終われば、俺の熱は全部お前の中に注ぐんだぞ?
なら、お前の熱は俺が」
「………?」
「ここに注ぐんだ」
守弥は可愛らしい臍の下側を指さし、そこから人差し指を移動していく。
「正確に言えば、な。
ここで俺とお前が繋がる」
「ふえ…?」
其処は花芯以上に秘すべき場所。
「ここ…で…?」
「男同士はな」
「………」
「ここで繋がって俺の熱を中に注ぐ。
だから、咲良が零したのは俺が飲む。
対なんだから当たり前のこと」
「なれど…」
不安げな咲良の額に唇を落とす。
「大丈夫だ。
いきなり体を繋いだりは絶対にしない。
ちゃんと事前に準備するし、しっかり解してから繋ぐ」
「わたくしは、その下準備を覚えればよい…、と…?」
「いや。
そこは全部俺がする」
「ふえ…?」
「対の姫を甘やかして蕩かせるのは鬼の役目だからな」
「え、それ…は…」
室内の明かりをおさえ目にし、守弥が寝巻きの帯をほどいた。
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