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「………生まれ育った里もなぁ…無事ではすまなかった…」 里長の家は返しの風に見舞われて真っ先に夜刀比古が非業の死を遂げ、後を追うように両親も亡くなった。 里長を失い采配する者がいないことで、里に住む人々の心も荒れに荒れた。 夜刀比古が作り出した濃い呪いに晒され人心が乱れた里。 土地は痩せて作物が育たず、種を植えても腐ってしまう。 疫病にも見舞われ、次々と里の者が倒れた。 香久良が丹精込めて育てていた薬草園も一つ残らず枯れ果てて薬を調合出来なくなり、多くの者が亡くなってしまった。 かつて交易によって繋がりを持っていた周りの村や里は、親しくしていた護矢比古への仕打ちを良しとせず香久良が作った薬草を譲ってはくれなかった。 援助を受けることも出来ず、ほぼ壊滅してしまったのだ。 人々の嘆きと苦しみの渦巻く地にも、それを引き受ける形で枝垂れ桜と桃、そして松の木が生えた。 後に外宮が建つ。 三つの宮は、そうして出来たのだ。 「立て直したのは…」 長一家に代わって里を立て直そうと奮闘したのは、香久夜と両親であった。 嘆き悲しむ人々を励まし、周囲の里や村々に謝罪をし助けを求めて回った。 真摯に向き合い、今までの行いを悔いた。 非業の死を遂げた妹の分も自分は励まねばならぬのだと、香久夜は必死で働いた。

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