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確信があった訳ではなかった。
何となく咲良が傍にいるような感覚だったり、触れられているような瞬間があった。
「背中をさすってくれていたか?」
「はい…」
「社務所で祝詞を書いた時も傍にいたのか?」
「…はい…」
「肩や肘に触れていなかったか?」
「どうしてお分かりに…?」
「なんとなく、な。咲良に触れられているような気がした」
「………っ、…っ」
驚きと嬉しさが入り交じった表情を浮かべ、咲良は守弥に抱きつく。
「嬉しゅうございます…っ。
気づいていただけていたのだと…。
守弥さま…っ、わたくし…っ、わたくし…っ、嬉しゅうございます…っ」
「もう、無茶はするなよ」
「はい…っ」
軽く音を立てて唇を啄むと、咲良も啄み返してくれた。
はふ、と漏れる息も、鼻に抜ける声も守弥を煽ってやまない。
湯殿で上気しているのを差し引いても、その瞳は潤み色香が駄々漏れて肌の香りも甘さが増し、このまま体を繋いでしまおうかと思うくらいに守弥を誘った。
咲良本人はほぼ無自覚。
「………っ」
それを堪える代わりに、咲良の耳殻を噛んだのだ。
昨夜、情交の真似事で済んだのは半ば奇跡のようなもの。
婚儀までの半年、堪え切れる自信などない。
『怖がらせたり無理やりはしたくないからな…。
少しずつ、少しずつだ。
堪えろ、俺…』
ほわほわと鼻腔を擽る甘い香りを吸い、二度寝をきめようとしたその時。
どごぉっ!
『………?』
何かが吹っ飛ぶ音がした。
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