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◆◇◆ 朝食後…。 腹が落ち着いてから、咲耶は風呂をすすめられた。 怒りのボルテージのままに山越えをして汗だくであったし、髪も随分ボサボサになって汚れてしまっていた。 ばあ様が丁寧にブラッシングをしてくれたが、まだなんとなく埃っぽかったのだ。 程好い温度の湯に浸かり、時雨やばあ様が見せてくれた動画や写真を思い出す。 七歳の姿のままだった咲良が、日々少しずつ背が伸びていた。 急に伸びているところもあって引っかかる所もあるにはあるが、年相応に成長していたことは正直驚いた。 「勝手に知らないところで成長しないでよね…」 一人ごちる。 痣にしてもそうだ。 自分が医師になって治してやりたい。治すのが自分の役目だと思っていたのに、それも風に飛ばされたと言うではないか。 「意味が分かんないわよ…。 あたしの目標とかどうしてくれんの。 つか、心の準備ってもんがさ…」 頑張ってきた目的がなくなり、これからどうしたものか。 彼方の宮の中だけが唯一の世界だった咲良が、此方では皆に慕われ、かなり可愛がられて過ごしてきたことがうかがい知れて。 「あたしだけが頼りだった筈なのに…」 子供子供していた咲良を取られたような気がして、成長を喜ぶべきなのか寂しく思うべきなのか、心の置きどころに悩む。 それに。 「なんで姉のあたしより、女子力高めなワケよ?」 確かに背は伸びた。 スラッと細身で手足も長い。 長い銀髪を結い上げているのを除いても、睫毛は瞬きの度に音がしそうな位に長いし、目もとは優しげな甘さがある。 唇もふっくらしていて、男子というより女子に近い。 なのに、身のこなしはなよなよしておらず、所作自体が無駄がなく優美で…。 「女子としてのあたしの立場がないっつーの…」 咲良が貸してくれたシャンプーのボトルを指でツンツンしながら、咲耶はため息をついた。

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