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◆◇◆ 陽が傾き始める頃、両親は席を立った。 セダンのトランクに咲耶の自転車が入りきらず、塗装に傷をつけるのも躊躇われる。 両親は「別に構わないのに」とニコニコしているが、値段の張る車種に守弥と時雨が止めたのだ。 お付きのドライバーも同様に。 「別にいいって言ってるのに…」と咲耶が呟く。 「いや、流石にあの塗装は傷つけたくないよねぇ」 「限定生産車だしな…。 塗装を剥がすのもアレだし、万が一段差で跳ねでもしたら板金も高くつくぞ」 「なんともないわよ~」 「「だから!無理やり積むな!!」」 時雨と守弥は、咲耶が無造作に積もうとするのを全力で止める。 「咲耶、守弥さまがこれだけ本気で止めるのはよほどの事です。 無茶をしてはいけませぬ」 「えええ~………いいじゃないの…」 「いけませぬ」 「う…」 咲良の声が少し低く聞こえて、担ぎかけた自転車を地面に降ろす。 そこに時雨が梱包用の毛布を持って来た。 「今の内だ。 気が変わる前にやるぞ」 「良かった、降ろしてくれて。 はいはい、今のうちにくるんじゃうよ~」 「わたくしもお手伝いいたしまする」 SUVの後部に毛布を敷いた所へハンドル周りやカゴを毛布で固めた自転車を乗せる。 自転車と座席の間に緩衝材を入れ、ずれないようにしてから毛布をもう一枚かけた。 「え?そっち?なんでよ?」 「その高級車を傷まみれにするのは、どうしても承服できないからな」 「そういうこと」 「咲良、財布とスマホを持ってくるついでに上着を羽織って来てくれ」 「はい…っ」 勝手口の方へ咲良が駆けていった。

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