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閑静な住宅街の奥、こんもりとした屋敷森の向こうに春日の家はあった。
二階建ての白壁の家の玄関先に車を寄せると、子供達がわらわらと出てきた。
「おかえりなさいっ」
「ねぇねぇ、ホントに咲良ちゃんのとこ行ってきたの?」
「どうだった?」
「ねぇねぇ、どうだった?」
「お姉ちゃんホントに殴り込みしてた?」
小学生とおぼしき子供達は咲良や咲耶の弟妹なのだろう。
目がクリクリしていて、咲良にも似ている。
「お姉ちゃんもちゃんと着いてたし、そんなに暴れてはいなかったわ」
「そうなの?
咲耶ちゃん結構乱暴だからさー」
「壁や床に穴開けたりガラス割ったりしててもおかしくないよね」
「ドアとか蹴破ってなかった?」
「ちょ、そこまで酷くないわよ!」
車から降りた咲耶が頬を膨らませる。
「咲良にも会ってきた。
ちゃんと元気だったよ」
「ホントに!?」
「ええ。
お母さん達、咲良が作ってくれたご飯もご馳走になってきちゃった」
「えええええ!?さくらちゃんの!?」
「どんなの食べたの?」
「このバスケットの中に入ってるよ~。
後で皆で食べてね~」
「「え…っ!?」」
時雨がニコニコしながらバスケットを子供らに差し出した。
「水色の付箋がついてるのが和惣菜で、黄緑色のが洋食系。
ピンク色のは和菓子、藤色の付箋は洋菓子が入ってる。
まだまだあるから、運ぶのを手伝ってくれるか?」
「う、うんっ!」
守弥が差し出したバスケットも受け取り、子供たちは玄関へと運ぶ。
「お兄さんたちはだあれ?」
一番小さい妹が見上げる。
小首をかしげる仕草が咲良に似ていた。
「俺は守弥、あっちにいるのは時雨。
咲良がいま住んでいる神社の人間だよ」
「さくらちゃんの?」
「ああ」
「咲良に会いたいか?」
「うんっ!」
「目の前にいるぞ」
「ふえ?」
荷台から小さめのバスケットを降ろしている咲良を指差すと、くりくりとした目が大きく見開かれた。
雪のような色の髪と夕陽のような緋色の瞳。
ふわふわの上着と細身のジーンズを身にまとった咲良を見て、知らずため息がこぼれた。
「さ、さくらちゃん…?」
「ええ」
「ホントにさくらちゃん?」
「ええ、そうですよ」
咲良が少し屈むと、白銀の髪がさやと音をたてた。
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