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生まれた時にはもう、黒い痣があったと聞いていた。
両親もめったに会いにも行かなかったことで、もしかしてとても怖い容貌をしているのではないかと思ったこともあった。
だが、実際目の当たりにして恐ろしい要素は欠片も無かったのだと知って。
「さくらちゃん、……きれい…」
という言葉が自然に漏れた。
「綺麗ですか…?」
「うんっ」
「髪の毛も目の色も全然ももちゃんと違いますが、気持ち悪くはありませぬか…?」
「そんな事ないよ。とってもきれいだもん」
「…ありがとう。嬉しいです。
ももちゃんはとても可愛らしいですよ」
「………っ、」
咲良は屈んで末っ子の桃と目線を合わせて頭を撫でる。
「山奥の隠し宮に咲耶が来てくれて…。
妹が生まれたと教えてくれていたのです。
写真も見せてくれて…。
小さなお手々をキュウッと握っている可愛らしい赤ちゃんの写真でした。
こんなに大きくてとても可愛らしくなっていたのですね…、ふふ…っ」
写真でしか知らない家族。
会いたいと思っても、注連縄の外へ出ては行けない。
隠し宮の屋根に付喪神達と登り、どうか息災であってほしいと願いを込めた風を送ったこともあった。
「お話ししたいことは山ほど…、いえ、星の数ほどにありまする。
少しずつ…少しずつお話ししましょうね」
「うん…っ」
異国の人のような色合いなのに、顔立ちは自分達と近い。
妖精か何かが気まぐれに現れたかのようで、まだ低学年の桃にとって咲良は不思議の塊だ。
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