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『あれれ?さくらちゃんって、男の子だったよね…?違ったかな…?
かわいくてきれいで、いい匂いがする…』
咲耶が休日に出かける時につけるコロンとも違う、柔らかくて甘い自然な香り。
「さくらちゃん、いい匂いする…」
「いい匂いですか?」
ふんわりと笑んで傍らを見る。
「もしかして、ぷりんの香りが漏れていたかもしれませんね」
「ぷりん?」
「ええ。
小さいのと、ばけつぷりんを拵えたのです。
こちらの籠にたんと入っておりまする」
「もも…、わたしの…も?」
「ええ。勿論です。
ももちゃんのも入っておりまするよ」
「崩れないように俺が持つ。
こっちの軽いやつを頼む」
「はい」
大きめのバスケットを守弥が持ち、咲良と桃は小さめのバスケットを一緒に持って歩きだした。
「……………」
咲耶の動画も見てみたいと言ったものの、いざ玄関まで来ると足が止まる。
『は、入ってもよいのでしょうか……』
両親やきょうだいが住む家ではあるが、咲良にとっては初めて訪れる場所だ。
足を踏み入れて良いのかなんとなく躊躇われる。
すくんだ足が前に進まない。
「さくらちゃん…?」
「………」
「咲良?」
「……ぇ、ぁ………」
「大丈夫だ。俺達と一緒なら不安も無いだろう?」
「さくらちゃん、もももいるよ!大丈夫!」
「ひゃ…っ」
二人が持っていた荷物を守弥が引き受け、桃が咲良をグイグイ引っ張って行く。
「も~、なに遠慮してんの。
ほらほらほら、入った入った!」
「え、えええええ…っ」
気後れして動けない弟に気づいた咲耶も戻って来て背中を押した。
「まっ、待ってくださいまし…っ」
「「待~た~な~い~!」」
靴を脱ぐなり、咲耶と桃が二人で咲良の手を引いていく。
「守弥さま…っ、二人を止めてくださいませ」
「心の準備もあるだろうが、こういう時は女子に逆らうと怖いからな。
おとなしく従った方がいいぞ」
「そゆこと!」
「えええええ…っ」
賑やかな声がする場所まで二人はグイグイと引っ張っていく。
抵抗も虚しく、リビングまで咲良は引きずられて行った。
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