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美味しい惣菜やバケツぷりんを堪能し、咲耶やきょうだい達の動画を観て大いに盛り上がった後、三人は席を立った。 「えええ…帰っちゃうの…?」 「今日くらいは泊まってっても…」 「申しわ……いえ、…ごめんなさい…。 お泊まりしたいのはやまやまなのですが…」 「困らせるんじゃないの。 咲良にも都合だってあるし、急に泊まってけとか無茶言わないの」 「でも…」 「やっと会えたのに…」 残念がる弟妹たち。 「絶対ダメということは無いのです。 ずっと神様がいらっしゃるところで生活してきたので、一般のおうちでお泊まりすることに慣れるまで、少しだけ待って頂けたら…」 「………」 「そんなに特別なとこなの?」 「こわいところ?」 「そうでもありませぬよ。 ただ、15年間隠し宮から出たことがなかったですし、今も外の世界に慣れるための準備をしているところなのです」 「………」 出来れば引き留めたい。 一晩だけでも。 「もっとギュッてしたいよ」 「もっとお話ししたい」 「………わたくしも、もっともっとお話ししていたいです」 「なら、もうちょっとだけ…っ」 末っ子の桃も咲良にしがみつく。 「………たくさん心配を……かけてしまった人がまだいるのです…」 「え…」 「隠し宮の…付…、いえ、隠し宮でわたくしを可愛がってくださった皆さんにも話したいことがたくさんありまする…。 それに…、いまは一緒にいたい方がおりまする…」 「でも…」 「とても大事なお方なのです…。 お慕い……いえ、好きで好きで離れたくないほどにお慕い申し上げていたのに、事情があって一月ほど離れておりましたゆえ……、今はお傍にありたいのです…。 申し訳ありませぬ…」 咲耶の幼い頃を見たいと思ったのも弟妹たちに会いたいと思ったのも本心だが、スルッと叶うと思わなかった。 守弥のきょうだい達と同じように咲良を受け入れてくれて、こうして傍にいてくれる。 なんと嬉しいことか。 なのに、たった一晩だけでも守弥と離れる事は身を引き裂かれるように辛い。 結果、きょうだい達を困らせていることに気づいて急に怖くなってきたのだ。 「わたくしの我が儘だと分かっておりまする。 なれど……」 ほろと涙が零れる。 傍らに立つ守弥が、そっと肩に手をかけた。 「いまは、片時も離れとうないのです…」 小さな子供にも分かるように言葉を選びながらも、心の内を明かすにはいつもの口調に戻ってしまう。 「さくらちゃん…」 「今は…今だけは…」 咲良を気遣い寄り添う守弥を見て、両親は悟った。 「ああ、やはり、あの日迎えに来た鬼は彼だったのだ」と。

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