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「………コアラかっての…。
つか、重くないわけ?
そのまま靴を履くってなんなの」
「コアラ………。
ナイスなツッコミ、嫌いじゃないねぇ」
咲良を抱っこしたまま器用に靴を履く守弥に咲耶がツッコんだのを時雨が拾う。
「意識が無い状態って重い筈なんだけどねぇ…」
「そんなに重くないぞ」
「………えええ…」
「兄さんには軽いみたいだねぇ」
「まさか、普段もこんなじゃないわよね。
食後にそのまんま寝て運ばせてるとかさ…」
あまりの無防備さに咲耶が呟く。
「ないない。
どんなに眠くても歯磨きして部屋まで歩いてってるし。
足元が危なっかしくて兄さんに担がれちゃう事はあっても、こんな感じに運ばれちゃうのはないよ~」
「抱っこも担ぐもそんなに変わんないじゃないのよ…」
おかしい。
一緒に暮らしたことはないが、咲良はこんな感じだったろうか。
どちらかと言えば聞き分けが良くてしずしずと歩いていたし、ヤンチャさの欠片も無かった筈だ。
「見た目は殆ど女子だけど、意外にすばしっこいんだよね…。
あと、思ったより身軽。
神職の衣装着たまんまでうちの弟達とダブルダッチして息切らさないくらい」
「は………?
あのバサバサしたやつ着たまま?
嘘でしょ?」
「いやいや、ホントホント。
あのバサバサしたやつ着たまま跳んでたよ~。
袴をちょいと摘まんで裾を少し上げた程度でヒョイヒョイって」
「ばあ様も混じって楽しそうだったな」
「………あのばあちゃん何者…!?
つか、あのバサバサしたの邪魔になんないっておかしいでしょ。
髪だってさ、滅茶苦茶長いじゃないの」
「ちみっこい時からあの格好だから、あんまり邪魔になんないらしいよ~。
俺たちも試したけどね…」
「袖括って袴持ち上げても無理だったな。
着替えて漸く追い付いたくらいだ」
「………縄回すの早くされたとか?」
「どっちかって言うと手加減して貰った方だな」
「そうそう。
咲良が簡単そうに跳ぶからどんどん早くなってって、それにばあ様も混じってヒョイヒョイって。
あれも動画に撮ってあるから、後で観て。
楽しそうにキャッキャしながら跳んでるから」
「……………」
守弥の車までてくてく歩いていく間に、咲良の意外な一面を聞く。
お淑やかな面しか知らなかったが、自分程とはいかずともなかなかヤンチャなようだ。
後ろからついてくる両親も、思わぬ一面を聞いて目をぱちくりさせている。
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