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陽が落ちてから結構経って夜遅い時間だ。
運転する時雨に代わって隠し宮には後日改めて立ち寄るとLINEを入れると、宮司から「大丈夫ですよ。体調がまだ戻り切っていない時は無理せずに」と返事が来た。
「ん?」
続けて返事が来た。
「本宮とこちらの雲外鏡を繋げる事が出来ましたので、いつでも隠し宮の者と話せるようになっております。
咲良さんにも後でお伝えください」と。
隠し宮にも雲外鏡がいるらしい。
あの花吹雪の中で一生懸命咲良を呼んでいた付喪神や式神達も、この半年気を揉んでいただろう。
明日にでも繋ぐ時間を作らねば。
「隠し宮にはまた今度な。
今日はもうゆっくり休もう」
「んに…」
うとうとしている咲良を早めに寝かせたい気持ちもあるが、住宅街から幹線道路へ抜ける。
向かうのは外宮ではなくばあ様が待つ本宮だ。
起源の二人から始まった咲良と守弥の長い長い旅は、半年の間に劇的な局面をくぐり抜けた。
これからも沢山の出来事があるだろうが、二人であればきっと乗り越えていく事ができるはず。
「結婚式の準備とか学校に通うのとか盛り沢山だねぇ」
「そうだな。
でも、なんとかなる」
「そうだねぇ」
道の駅を越えれば本宮はもうすぐ。
安心しきって凭れて眠る咲良の手を握ると、応えるようにキュウッと握り返された。
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