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「………気になるのはそれだけではないようですがね」
「うっ………」
宮司には何と無く気づかれていたようだ。
「椅子に座れば床にベッタリになるのが気がかりなのでしょう?」
「はい…」
今までは板張りの床に座ろうが、舞いをひと差し舞おうがなんともなかったのだが、先日受けた学力調査の際に気になったのだ。
身の丈と同じ位に伸びた髪が床に届いてしまうことを…。
出掛けにばあ様が持たせてくれたヘアゴムを駆使してどうにかしたが、これを毎度対処するのもどうなのだろうと思ってしまった。
「上履きで歩くのが日常ですし、床は必ずしも綺麗とは限りませんからねぇ。
学校にいる間だけ結い上げるのはどうです?」
「………そもそも、男子で髪を結い上げたりして登校する学生がいるものなのでしょうか…」
「留学生におられるでしょう?
ほら、黒髪でよりよりするドレッドヘアの方とか。
ぐるぐると頭に巻き付けてしまうのはどうです?」
「後ろの席の方にご迷惑になりませぬか?
それに………時雨さまがお切れあそばすか、おばあ様が卒倒いたしまする。
守弥さまもお困りになりまする」
「おやおや。
何事もチャレンジせずに諦めるものではありませんよ。
おばあ様ならきっとファンキーな咲良さんも受け入れてくれます」
「………」
「いっそ平安時代の貴族の姫のように専用の乱れ箱を使うとか」
「………もっと周りの方々の邪魔になりまする」
確かに乱れ箱に蹴躓くか、何かの拍子に蹴飛ばされそうだ。
「……まぁ、もう無理に伸ばしておく必要もありませんからねぇ…」
「それをお許し頂けるものかどうかも…」
「あ…」
時雨もだが、咲良の髪のケアを一手に引き受けている守弥が許してくれるものかどうか…。
宮司も流石に茶化すのをやめた。
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