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賑やかな夕食を終えて一息つく。
「ある程度の話は纏まったようですし、私はそろそろお暇いたします。では」
にっこり笑って空中をペロッと捲り、宮司が帰って行った。
ばあ様も撮影の手配で席を立つ。
「荊櫻のところの次男坊が滅法機械に強い子でねえ。
ちょっと相談に乗って貰ってくるよ」
「あっ、俺も俺も~。
聞きたいことあるんだよね~」
「鬼夜叉の子っこかぁ」
「気になる」
「すんげえゴリッゴリのゴリラみたいなやつだったりして」
「身の丈3メートルとかだったり」
「えええ…気になる!」
「それがねぇ、荊櫻そっくりで細っこいのに滅茶苦茶強い子でねぇ」
「えええええ…っ、鬼夜叉みたいなのがまだいるのかよ」
「信じらんねぇ…」
「えぇぇぇぇぇ…」
「いや、そりゃ気になる」
「鬼夜叉2号か…」
「ドキドキすんなぁ…」
ばあ様と時雨に続いて付喪神も付いていってしまった。
「「……………」」
囲炉裏の間が一気に静かになる。
「申し訳ございませぬ…」
「ん?」
「単に学校での事をこぼしたつもりが、思ったよりおおごとに…」
「いや、俺も気になってはいたし、いつ切り出そうかと思っていたからな。
丁度いいタイミングだったと思う」
「まことに…?」
「ああ」
ガッカリしたような表情でもない。
決して困らせたのではないと言われて、漸くホウッと息をつく。
「短くなっても、わたくしの髪の毛の一切は守弥さまが…?」
「もちろん」
「髢にした方も…?」
「ああ。
定期的に手入れをするのは俺だけだ」
「ご迷惑になりませぬか?」
「まったく。
寧ろご褒美的なものだと思ってる」
「………っ」
守弥の言葉に、顔が熱くなる。
「咲良だって俺が着る和服全部を仕立てているだろう?
なら、切った髪も普段のケアも俺がするのは当然だ。
他の事も譲る気はない」
「………」
きっちり言い切られて、顔どころか全身が熱い。
「もう…っ、」
守弥の溺愛っぷりはどこまで深いのだろう。
きっと自分が想うよりも、もっともっと深い。
『わたくしも守弥さまへの想いをぎゅうううっと凝縮せねば…っ。
はにゃ~んっとなる位にぎゅうううっと…、ぎゅううううううううううっと…!』
唇をキュッと噛み締めていると、額に口づけが落とされた。
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