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「ふむふむふむ……。 確かに甘い香りがしなくなってるねぇ……」 「わたくしの、香り……?」 「花でもない、果物でもない、甘くて安らぐ香りが消えてる。 守弥にはどうだい?」 「俺には、いつもと同じだが……」 「そうかい……。 さくら、守弥の香りが分かるかい?」 「はっ、はい」 守弥には同じで、時雨とばあ様には分からなくなっている。 そして、守弥の香りも咲良以外には感じ取れない。 「…………てことは……。 もしかして、アレ、しあえたってこと!?」 「ということかねぇ……。 二人の間の気も安定してるし」 ニヤニヤ。 「「………………っ!?」」 昨夜のことが思い出されて、咲良の顔が真っ赤になる。 「あれあれあれ? 咲良、もんのすごい顔が真っ赤!」 「………………きっ、気のせいでございまする!」 「そっかなあ……? 俺が言ってるのは対の甘噛みの事だけど、もしかして、それ以上のあまあまラブラブちゅっちゅ出来たっぽいよねぇ……?」 「っ、……っ、ひあああっ!」 どごっ! どどん! 「ひあああ!」 ギュウギュウする時雨を張り倒し、物凄いスピードで咲良が守弥に駆け寄る。 「い、てててて……」 「あんまりつつき回すからだ」 「そうだねぇ…」 「そりゃないよ……」 鬼の甘噛みが成立したのは長畳。 守弥の石化の可能性が少し低くなったのを意味する。 あとは、咲良の誕生日に入籍するまでに情を深く通じ合わせればいい……。 ばあ様は、少しだけ肩の荷が軽くなったような気がした。

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