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予兆
山の夏は短い。
お互いの熱を知った夜から一ヶ月……。
朝晩、冷たい風が吹くようになった。
境界の裂け目も出来る頻度に波があるらしく、最近発生する事が増えたが、守弥と時雨の対応で間に合っている。
以前のような危なっかしさが無くなり、守弥の術が安定したのが大きい。
「兄さんがガッと抑えてくれるから、すんごい助かる」
「………俺は出来ることをしてるだけだ。
咲良が補助してくれるからな」
「わたくしは何も……」
「ラブラブの力かねえ……、ふっふっふ」
「!」
ボッフゥ!
途端に咲良が羞紅する。
守弥と時々触れあうようになり、大人の口づけをすることも増えた。
お互い傍にいるのが当たり前で、視界の中に捉えて居ないと落ちつかない。
昨夜に至っては、秋祭りの打ち合わせで守弥が留守をしている間に、無意識に寝台で服や寝巻きを集めて巣作りのようなことをしてしまった。
「あっ、あれは……っ、その……っ」
守弥はなかなか帰らないし、枕をギュウギュウするだけでは物足りなくて。
寝巻きを引っ張り出して香りを深く吸ったのだ。
そこからは、もう、歯止めが利かなかった。
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