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「上着も着ずに外に出てたのかい?」
いつの間にか咲良の姿が見えなくなり、心配していたばあ様が目をぱちくりさせた。
「ほんの数分でございますし…」
「山の気温を甘く見ちゃいけないよ。
風邪でも引いたら大変だ」
「手も頬っぺたも冷たくなってたから、先に風呂に入れてもいいか?ばあ様」
「もちろん。
しっかり温めてやっとくれ」
「わかった」
「え、そな…っ、大事ありませぬのに…」
守弥の肩に担がれたまま、湯殿へと連行されていく。
「可愛いのにほんのりヤンチャって面白いよねぇ…」
「ばばは可愛くてモコモコの上着が無いか探しておくよ…」
遠ざかる咲良の声を聞きながら、時雨がスマホをポチポチしている。
ばあ様が画面を覗いた瞬間サムズアップをした。
「………おおおおおぉ…。
なんてぐっじょぶな…」
「うふふん。誉めて誉めて~」
スマホの画面の中には咲良がいる。
社務所の壁に凭れて立つところから、雪を踏みしめてトテトテ歩いてくる。
ぽふんっと守弥の背中に抱きつき、おずおずと腕を回す。
「よく咄嗟に撮ってたねえ…」
「爆萌えの予感がしたんだよ…」
「ばばの激写の遺伝子かねぇ」
「ふっふっふ…」
動画の続きを観る。
振り向き加減の守弥が冷えた咲良の手に触れて案じるように前側へ誘導し、頬に手を当てる。
その手に頬をスリッとする。
「おや…、なんと可愛い…っ」
思ったより冷えている頬に驚き、守弥がジャケットを脱いで包み込む。
「このあとだよ、ばあ様」
「………な、なんと………っ」
ジャケットごとギュウッとされて、目を閉じる。
守弥の香りに包まれ、ようやく安堵したといった表情。
「こんな可愛らしい表情…っ、たまらないねぇ。
ばばにも送っとくれ…!」
「はいは~い」
「ふおおおおお…っ」
送られてきた動画をしっかり保存する。
その間に時雨は限られたメンバーにしか見れないアカウントに動画をアップしていく。
秒で既読が付き、いいねと可愛いと尊いの反応の連打が来た。
宮司だけでなく、瑠維や荊櫻からも「いいぞ!」「もっとやれ」との反応であった。
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