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お腹も満たされてひと息つき、車に乗り込む。 「お楽しみのクラゲの水槽を見に行こう」 「はい…っ」 今度は水族館に向かう。 前に来たときと同じように、海辺にちょこんと建っている。 手首にタグを巻いて貰い、中に入った。 ペンギンに挨拶をして、大水槽を見る。 シロクマは夫婦だったが、一頭しかいない。 「ああ、赤ちゃんが生まれたから、産室にいるらしい。 春になったら出てくるって書いてる」 「まぁ…っ。 きっと可愛らしいでしょうね」 「お披露目の頃にまた来よう」 「はい…っ」 春にまた訪れる楽しみが増えた。 半年前に来た時に青いライトで照らされていた水槽。 そこには、あの日と同じようにクラゲが揺らめいていた。 「………」 万物の命の始まりのような神秘的な揺らめき。 時が止まったような静寂がそこにはあった。 「美しいですね」 「ああ…」 季節が移り年を重ねても、また来よう。 そう囁いた守弥に咲良がぴったりと寄り添い、繋いだ手にキュッと力が籠る。 もうすぐクリスマス。 年末年始もあっという間にくるだろう…。 忙しくはなるが、お互いをもっともっと好きになることを絶対に忘れないようにしようと、二人は約束を交わした。

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