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夏の大祭のあとは、外宮で執り行われる秋祭りの準備が続いていた。
秋の実りの感謝を神に伝えるのが主になる。
「俺、どうしても竜笛(りゅうてき)が苦手……」
「俺は篳篥(ひちりき)だな」
「そろそろ代役無しで祭りが出来ないかねぇ……」
ほとほと困り果てるばあ様。
「全く吹けない訳では無いのですよね?」
「吹けなくは無いけどね、たまにとんでもない音がするよ。
慣れてるばばでも頭が痛くなる」
「そんなに……?」
いや、まさか、そんな。
「試しに吹いてみるか」
守弥が構えると、ばあ様も身構えた。
ふぃ~。
鳴った。確かに鳴った。
「譜に合わせてごらん、守弥」
「ああ」
ひい~、ふぃ~。
少したどたどしいが、なんとかメロディの体は成している。
「そんなに酷くは……」
ぷいい~っ!
「……………………ない、か……と」
焦りが出たのか、時おり面白い音になる。
「んじゃ、俺も」
ひゃー!
「………………」
時雨は初めからオクターブ上だ。
ぴゃー!ひょろー!ぷぎー!
おかしい。聞こえるのは鳶の声か、パニックを起こした子豚の声か。
流石に咲良も目をぱちくりさせた。
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