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「守弥さまの大きな手には、篳篥が小さすぎるような気がいたしまする」
「確かに小さくてキツいな」
「笙であれば何とかなりまするか?」
「………………善処する……」
「笙も似たようなものだよ、さくら」
「咲良、俺は?俺は?」
「時雨さまは、指の隙間に気を付ければ何とかなりそうな……」
「ええ~っ、俺も別のがいい!
金物の鳴り物とかさぁ~」
「適性もありまするが、どうにもならないのか見極めてからにいたしますか……」
「………いっそ、………無難なCDにしとこうかねえ……」
既にばあ様は諦め顔だ。
「もう一度吹いて頂けますか?」
「…………俺だけか?」
「いえ、時雨さまも」
「う、嘘……!」
「もう一度だけでございます」
渋々守弥と時雨が吹き出した。
ひいい~!ぴげげげげ!ひうおおおおお!
「うおおおおお!」
「地獄の獄卒とて、もう少しまともなイビキをかくぞ」
「うおおお!」
「耳が……耳がぁ!」
付喪神だけでなく、式神ももんどり打つ。
ぴよびよぴいぃいいい!
ひょろひょろ、ひょへええ!
「………………」
最早木管が出す音ではなくなっている。
「ほげえええ!」
「いっそ一思いに……っ」
「ふごおおおおお!」
再び障子と窓が軋み出し、外では庭木にとまる鳥までが気絶してボタボタと落ち出した。
「さくら、雹が降り出す前に止めておくれ」
「………………天変地異まで?な、なんと……っ」
これほどとはと驚きながらも、咲良は二人の演奏(?)を止めた。
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