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◆◇◆ 爆弾低気圧の猛烈な地吹雪から数日。 前線が太平洋側に抜けて、風も漸く穏やかになった。 今年初めの一粒万倍日と吉日が重なる善き日。 咲良の髪を切る日が来た…。 守弥は銀色の髪の毛先を丹念に解してから全体にゆっくり櫛を通していく。 「すんごい…。 さくらの髪、艶々…っ」 「極上の絹糸みたい…」 「そりゃそうだろ…」 「洗うとこから乾かすのも、櫛かけんのも毎日念入りにしてたもんよ」 「んだんだ」 「えう…」 縁起の良い日に髪を切ると決める前から毎日咲良の髪のメンテナンスしていたのは守弥だ。 洗髪から頭皮のケア、ドライヤーも仕上げも全部…。 「元々守弥が手入れしてたけどさ、更に念入りになったもんな」 「うう…。 自分ですると申し上げたのですが…」 「仕方ねえよ。 らぶらぶな相手の髪だぞ。 鬼が譲る訳ねえよ…」 「えう…」 普段のケアもかなり念入りだったのに、髪を切って髢(かもじ)にすることが決まってからは更に…。 その甲斐あって、異国の姫君のような見事な髪になってしまった。 「対の鬼の溺愛っぷりは底無しだって言うけどさぁ…。 すんげぇな…」 「こんだけ綺麗な髪なら、髢にしてもかなりいい状態を保てるよなぁ」 「んだなぁ」 見事な仕上がり具合に付喪神達がほうっとため息をついた。

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