611 / 668

一方、その頃。 守弥の家族と咲良の家族が揃うと囲炉裏の間では流石に狭い。 ご祭神に伺いを立てた上で本殿での儀式となった。 暖房も効いて丁度良い暖かさとなったところで両家の家族が拝殿へ移動する。 ばあ様と時雨が間に立ち、それぞれの家族の紹介が始まった。 なんとも和やかで良い雰囲気である。 「ふむふむ…。 何と言えばいいのか…」 隠行(おんぎょう)して見守るご祭神が顎に手を当てて小首を傾げる。 「結婚式直前の親族紹介的な…」 「おおおおお…正にそれだ!」 ばあ様の式神がボソッと呟くと、ご祭神も納得する。 「確かに、それっぽい…」 「顔合わせとか結納とかすっ飛ばして結婚式みたいになるのも凄いな…」 「生い立ちがな、生まれた時からどっちも波乱含みだったからな」 「んだんだ」 「心配した分いっぱい幸せになるんなら、それに越したことはねぇのよ」 「あー………うん」 一連の試練を越えられていなければ、二人の命は尽きていたのだ。 心を痛め、気を揉み、何か手だては無いものかと煩悶したこともあった。 それが、これ以上ない幸せを伴って解決したとなれば喜びもひとしおなのだろう。 「いや、学校に通うために髪を切るだけだって」 「すげえ…。咲良の父さんと母さん泣きっぱなし…」 「ちょ、いや、確かに門出みたいなもんだけど…」 「肝心の咲良が入って来る前に感極まってる…」 号泣する両親を咲耶が一生懸命になだめている。 時雨もニコニコしながら助太刀に入った。

ともだちにシェアしよう!