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本日の主役となる咲良は守弥とともに拝殿の扉の前まで来ていた。
当日の服装をどうするかで随分悩んだが、姫乞いの儀式で此方に来た時の装束…巫女服と緋袴ということになった。
紗(うすぎぬ)の袿(うちぎ)を目深に被って立つ。
「大丈夫。
お前はただじっと座っていればいい」
「は、はい…っ」
緊張している咲良の背中を守弥がさすると、二人の足元にいた猫又達がひよひよと尻尾を振りながらニヤッと笑った。
「だぁいじょうぶだって!
大学入る前に美容師の資格取ってんだからさ。
どーんと構えてりゃいい」
ニヤッと笑う猫又に、出張してきている隠し宮の猫又が目を丸くする。
「へえ…。
髪をいじるのうまいな~って思ってたけど、そっか…免許持ちかよ」
「んだよ~。
もともとチビッ子達の髪切ってやったりしてたから下地はあったんだ。
たまにおいらも毛並みを整えて貰ってる」
「ほおぉ…。
確かにフワッフワの毛並み…!
落ち着いたら、オイラもお願いしようかな…」
「今でも構わないが…」
「お?お?おおおおお~?
すんげぇ…っ、こりゃたまらん…っ」
懐から取り出したブラシで丁寧にブラッシングしていくと、心地好さにゴロゴロと喉を鳴らす。
「まぁ…っ」
隠し宮で喉を鳴らしながら咲良に撫でられていた時のような上機嫌っぷりだ。
「オイラ、つやっつやになってる…。
あんがとな!」
ニカッと笑う猫又に、守弥も笑みをこぼした。
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