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緊張しやすい咲良が皆の注目を浴びながら髪を切られるのもどうよとなり、背中を向けて座る事になっていた。
椅子に乗せられていた白いものを持ってから、袿をカットケープ代わりにして背もたれのある椅子に座る。
大事に伸ばした髪は床に着いてさやと音を立てた。
その長い長い髪をいくつかの束に分けて小さな元結いで留める。
「では、始めます。
咲良、大丈夫。リラックスだ」
「は、はいっ」
守弥が鋏に手を伸ばした。
シャキ…。
シャキ…。
咲良が怖がらないように、ゆっくり鋏を入れていく。
シャキ…、シャキン…。
ひとつめの束が、時雨が持っている乱れ箱に入れられた。
長さのバランスがおかしくならないよう、守弥は慎重に鋏を入れていく。
「守弥さん、とても手際がいいのね…」
「神職の格好であれだけ綺麗に切るのは凄いな…」
春日の両親が感心している。
「紗だから、袿の下でぬいぐるみ抱っこしてるの見えてて可愛い…」
「あれ、初デートん時のアザラシだよね~」
「可愛すぎ…っ」
むちむちのアザラシのぬいぐるみを抱っこしてじっとする咲良に守弥の弟妹達は萌え萌えだ。
『鬼の溺愛が底無しとはいえ、ここまで徹底的なケアしちゃうんだもんねぇ…。
むっちゃ綺麗な髪…。
……!?』
乱れ箱の中へ順番に入れられた髪と咲良を見て、ほうと息を漏らしたところで時雨が固まった。
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