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小さな元結いで幾つかに分けた髪。
それがひと房、またひと房と切り落とされていく。
乱れ箱に並べられた髪は、大寒の雪のようにキラキラと輝いている。
「ホントに綺麗…」
双葉がホウッと息をつく。
「これが最後だ」
最後のひと房が乱れ箱に収まった。
前髪以外は殆ど鋏を入れたことのない長い髪…。
ずっと共にあったもの…。
「暫しお別れです…」
そうっと撫でる。
「守弥が髢にして大事にメンテしてくからね。
さ、うさこはもうちょっと我慢」
「はい…っ」
双葉がばあ様のところへ乱れ箱を運んでいく。
それを見届けてから、守弥は咲良の髪を綺麗に整える為に準備を始めた。
「ほぼ揃えてはあるが、裾を揃えて跳ねないようにするからな」
「は、はい…っ」
以前よりは慣れているが、やはり後頭部やうなじの辺りに触れられるのを咲良は苦手にしている。
「大丈夫。
ザワザワしたら手を止めるから」
「は、はいぃ…」
守弥のきょうだい達は何度か見ているが、春日の家族は初めて見る。
「ひ、ひにゃ…っ」
「お、おう…」
後頭部や背中がゾワゾワする度に、咲良が足をバタバタさせるのを…。
「え、ちょ…っ」
「さくらちゃん、可愛い…」
「ちょ、足ジタバタって…」
普段の淑やかで落ち着いていて大人びている姿とかけ離れた仕草に驚きつつも、咲良にも苦手なものがあったのだと、両親や咲耶はなんとなく安心したのだった。
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