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換気扇の一件で、咲良は気がかりがあった。 「わたくし、守弥さまの重荷になってはおりませぬでしょうか…」 てっきり簡単な換気扇をつけると思っていたのだが、結構大がかりな取り付け工事だったのだ。 当然値段の張るものだし、工事料金もかさんだ筈。 そう思うと、咲良はいたたまれなかった。 「なってないよ。 どちらかというと、大寒の氷点下で窓を開けてアクセサリーを作ったりとかやることが荒かったんだよ。 さくらがいてくれるから無茶を控えるようになって、ばばは気を揉まずに済むんだからねぇ」 「まことに…?」 「そうだよ。 ずうっと前から換気扇をつけた方がいいって言い続けてたんだけどねぇ…。 窓を開けてればなんともないとか言って無茶をしてたんだよ。 ようやくつけてくれて、ばばはどれだけホッとしてるか…」 「なら良いのですが…」 「うんうん」 対である自分を大事にするあまり、守弥の負担がどんどん増えていくような気がしていた。 身の回りの事だけでなく、金銭的にも。 「負担なんてことは決してないよ。 換気扇は元々つけなきゃいけなかったものだし。 守弥はあまり散財しないから、それなりにお金を貯めてる。大丈夫だよ。 それにねぇ。さくらがいてくれて守弥が無茶をしなくなったから、ばばは安心が増えてるんだよ。 そこは忘れないでおくれ」 「はい…っ」 ばあ様の安堵が増えているなら嬉しい。 守弥が意外に粗い面があったのも驚きだが、無茶をせずに綺麗なものを作るようになるならそれで良いような気がする。 少しでも役に立てているなら、何よりだ…。

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