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市内での買い出しを終えて守弥が帰って来たあと、ゆったり夕食をとった。
明日持って行くものは既に学校指定の鞄に詰めたし、お便りプリントと照らし合わせて確認も済ませた。
ワイシャツ、ネクタイ、靴下、制服、スラックスにベスト…。
身につけるものもしっかり確認をして壁にかけてある。
「出掛けに慌てないように、今日は少しだけ早めに寝ようかねぇ」
「あっ、は、はいっ、おやすみなさい…っ」
「うんうん。おやすみ。
布団をはだけないようにねぇ」
「はい…っ」
ばあ様に挨拶をし、付喪神や式神にもおやすみの挨拶をする。
皆、銘々に咲良と守弥に言葉をかけてからスウッと消えていった。
いつも咲良の傍にいる雲外鏡も。
「………どうしてお姿を…?」
「俺たちが寝坊をしないように気を使ってるんだろうと思うが…」
「そんな…。大丈夫ですのに…」
「丸っきり消えてる訳でもないかな。
姿は見えなくても、微かに気配はわかる」
「………ええ…。たしかに…」
咲良にゆっくり眠ってもらいたい。
初めて学校に通うのだから、差し障りのないようにしてやりたい。
だが、何事か起こったり、咲良や守弥が呼び掛けでもすれば直ぐに駆けつけてくれるということなのだろう。
「学校に慣れれば、またいつものように寝る時でも足元や枕元に姿を現してくれる。
少しの間だけ、こういう感じになるだけだ…と、思う」
「はい…っ」
皆の気遣いにしっかり応えられるように、そして、心配をかけないようにせねば…!
咲良はそう心に決めた。
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