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少し緊張気味の咲良をなだめて寝入った………筈だったのだが。 流石に10時前の就寝だったからか、守弥は途中で目が覚めてしまった。 傍らではすよすよと眠る咲良がいる。 「直ぐ戻るからな」 小声で声をかけて寝台から降りる。 吹雪いてはいないが、廊下はかなり冷えている。 窓の外は氷点下の世界だ。 小用を足しての戻り際、窓の外を見る。 冬特有の澄んだ空に星々が瞬いている。 「流石にスマホを取りに戻って撮るのもな…」 写真であっても咲良は喜んでくれるだろうが、同じ見るのなら二人で肩を並べて見た方がいい…。 そう思い直して部屋に向かう。 「んに…」 ドアを開けると、微かに声がする。 「……しまった…」 思ったより時間が経ってしまっていたようで、咲良が寝ぼけ眼で守弥を探していた。 「ああ…、すまない。 直ぐに戻るつもりで…」 「んぅ…」 頬に手を当てる。 「……しゃっこい…」 「冷たいか…?」 「えう…」 咲良が寒くないように掛け布団を控えめにめくると、厚手の毛布の下から華奢な腕が伸びてきた。 「しゃむ…の…?」 「寒いな…。 温めてくれるか?」 「んぅ…」 にこぉっと微笑み、守弥を迎え入れてくれた。 「ああ、あったかいな…」 「ん…」 きゅうっと抱きしめあう。 「朝までにはまだまだ早いからな。 もう少し寝ような」 「はう…」 両の瞼に唇を落とす。 「でこちゅ…」 「そうだな」 額同士を合わせて軽くぐりぐりする。 「咲良はデコちゅーが好きだな」 「ん…」 穏やかに笑む唇を啄むと、咲良がゆるゆると眠りの淵へ落ちていく。 「大丈夫。 ずっと一緒だ」 「ん…」 背中に回された腕も、華奢な体の抱き心地もいい。 互いの熱を煽ることなく、ただただ甘い時間にたゆたう。 守弥も咲良の寝息に誘われて、ゆっくり寝入っていった。

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