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ばあ様が玄関までついてきてくれた。 「何も心配いらないからねぇ。 安心して行っておいで」 「はっ、はいっ。 行ってまいります」 式神と付喪神の面々も玄関に来た。 「さくら、大船に乗ったつもりでな!」 「どーんと構えてりゃ大丈夫だぞ!」 「んだんだ!」 「不安なら、わしが…」 「とっつぁん!そこは我慢せにゃ…」 「そうかのう…?わし…陰行してついてってやりたいんじゃが…」 しょぼぼんとする雲外鏡に咲良が微笑む。 「わたくし、皆様と1日離れるのはとても寂しゅうございます。 不安もござりまする…」 「さくら…わし、ついていこうか…?」 「正直、ついてきて頂きたい位に不安でございます。 なれど…。 なれど、これは本来七歳の時に克服せねばならなかったこと…」 「さくら…?」 「多少時期がズレてしまっておりますが、相手は同じ年頃の皆さんです。 初めからうまくいかなくとも、少しずつとけ込む努力を重ねればいずれは受け入れて頂けるものだと思うのです」 「うんうん。 ばばもついていってあげたいけど、そこは我慢しようねぇ。 緊張もするだろうし、不安もあるかもしれない。 でも、お姉ちゃんの咲耶が近いとこにいるし、守弥の弟妹たちもいる。 丸っきりひとりじゃないからね」 「はい…っ」 靴を履き、上着を着る。 通学鞄を背負い、ばあ様や式神、付喪神の面々に向き直る。 「皆様、ありがとうございます! 行ってまいります!」 「うんうん。 行っておいで」 「みやげ話待ってるど」 「はいっ」 「気をつけてな」 「はいっ。 行ってまいります」 皆に見送られて、駐車場へ走る。 昨夜、守弥からも言われた。 「失敗してもいいんだ。 間違えたらやり直せばいいし、悪いことをもししてしまったなら素直に謝れば大丈夫」と。 モジモジしてるより、一歩前に進めばいいのだと。 「わたくし、頑張りまする」 「その意気だ」 あと数ヶ月で16歳になるけれど、咲良は初めて学校へ行く。 どんなことが待ち受けているか分からないけれど、きっと自分は大丈夫。 守弥の車が白銀に染まる参道を駆けていった。 因みに… ガッチガチに緊張した咲良をクラスメートは温かく迎え入れてくれた。 学園都市に住まう付喪神たちも咲良を面白がって歓迎してくれたようで、大きなトラブルもなく学生生活にとけ込めたことをここに記しておこう…。

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