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「なんだかんだ言って、やっぱりお姉ちゃんだな」 「はい…っ」 性別が違うし見た目も違うこともあり、咲耶と同じクラスに編入されたのがとても有り難かった。 曲がったことが大嫌いなターミネーターゴリ子こと咲耶の弟…? 見た目を裏切るゴリラっぷりなのではと一瞬警戒されたが、一日過ごしている内に小動物っけとおっとりとした雰囲気と古風な物言いが面白いと受け止めてもらえた。 守弥の弟妹が休み時間に顔を出したのも大きかった。 緊張が解れて、ぎこちない表情がどんどん柔らかくなっていったのだ。 昼休みに守弥が様子を見に行った時には、体育館の横の壁でボルダリングに興じていた。 まっすぐ登るのは早いが、壁が手前にせり出したオーバーハングだと咲耶に敵わない。 指一本で全体重を支えることが出来る咲耶は、毎週角度が変わるハングを全て攻略しているらしい。 その腕一本でぶら下がる様子がゴリ子呼ばわりの由来のようだ。 「わたくし…、もっと頑張らなくては」 「咲耶も凄いが、ザイルを装着してるとはいえお前があれだけスイスイと登ってるのは驚いた」 「あっ、あれは…その…。 宮司さまから体力をつけなさいと、涸れ井戸の底から這い上がらされていた頃の名残りで…」 「まさか巫女服でじゃないよな」 「そのまさかですが…」 「………」 袖と裾は紐で括ってはいたが、それで登り降りしていたという…。 なるほど。 井戸にはオーバーハングはない。 まっすぐ登るのは得意でも、せり出した部分が苦手なのが分かった気がした。 いろいろ突っ込みどころのある話をしている内に駐車場に着いてしまった。

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