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「今日も一日楽しんで来るといい」 「はいっ! 行って参ります」 シートベルトを外して降りかける。 「あ…」 「………?」 ぎゅ。 「………っ」 咲良がぎゅうっと抱きついた。 守弥の香りを目一杯吸い込む。 守弥も立ち上る咲良の香りを堪能しつつ、額に口づけを落とした。 ほんの少しの甘い甘いひととき。 お互いの香りを深く吸い込み、抱きしめあう。 「そろそろ行かねば…」 「ん…」 「離れがたいのは、わたくしだけではありませぬよね…?」 「ああ。 俺もまだ離れたくないな…」 ぎゅう…。 「今日はカフェテリアで昼にしようか」 「はい…っ」 大好きだという想いを込めて、もう一度抱きしめた。 お互いに学業がある。 でも、離れがたい日だってある。 咲良が離れたくないように、守弥も離れたくないと思う日がある。 そう思うタイミングが同じだったことだけでもなんとなく嬉しい。 「行って参ります…っ」 咲良は校舎に向けて走り出した。

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