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「ふむふむ。
今時の学校は綺麗な建物なんだねえ」
ニコニコしながら現れたのはばあ様だ。
「あわ、あわわわわわわ…」
「ああ、驚かせちゃったねえ。
通りすがりの神職だから、許しておくれ。
うちの曾孫の婚約者がさくらでねぇ。
熱を出してぷしゅ~ってなったって聞いて来たんだよ」
保健医に軽く会釈して咲良の様子を見る。
「これ、ばーちゃんが前に言ってたことで間違いない?」
「うんうん。
さくやはちゃんと見ててくれてたんだねえ。
そうだよ、これがそう。
恭仁、ちょいと大学の方に行って上着かなにか持ってきておくれ」
「承知しました」
ニコっと笑い、別の空間へ上半身をねじ込む。
体の半分が空間から生えてるというシュールな状況なのだが、宮司が楽しそうなのがなんとも言えない。
「ばばは応急的なのを引っ張っておくよ」
空間に開いた穴から大判の毛布をずるずると引き出し、付喪神がいないのを確かめてから咲良にかけてやる。
「はう…?」
咲良が鼻をひくんとさせた。
「気付いたみたいだねぇ。
さくや、下の毛布を引っ張ってやっておくれ」
「うん」
ばあ様がかけた毛布の下から保健室の毛布を引き抜く。
「………っ、にぁ…」
主に右側の方にぎゅうっと抱きつき、深く息をしている。
少しずつ苦しそうな気配が引いていっているようだ。
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