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その頃、大学の大講義室の守弥は。 「守弥さん、守弥さん…」 「……………? ………………っ!?」 何もないところからニュッと宮司の上半身が生えているのを見て、流石に守弥も驚いた。 口を押さえられて固まる。 「しー……っ。 声を出さずに」 「……………」 コクリと頷く。 「一応結界を張りましたので、周りに私達は見えていません。ご安心ください」 「咲良に何かあったのか?」 「察しが早くて助かります。 ま、なんと言いますか…、要は焦れ焦れですかね」 「焦れ焦れ…?」 「守弥さんが足りなくてパンクしてます」 「………?」 パンク…? 車から降りる前にぎゅうっとハグもしていったのに…? 「ほんのちょっとの匙加減的なものです。 後で説明しますので、そのジャケットを渡してください」 「あ、ああ」 急いで脱いで渡す。 「今日の授業は午前のふたコマだけですか?」 「ああ…。 今すぐ行った方がいいならこのまま…」 「いえいえ。 学業はキッチリ優先でいいんです。 代わりに、終わったら直ぐに本宮へお願いします」 「あ、はい…」 「もろもろ気になるでしょうが、おばあ様も付いてますので。 時間稼ぎをしておきますから、気をつけて戻って来て下さい」 「すいません。 俺が戻るまで、咲良をお願いします」 「お任せください。 しっかりお守りいたしますよ」 宮司が帰り、結界が解かれた。 授業に集中しろとは言われたが、気になるものはしょうがない。 一番後ろの席なのもある意味幸いだ。 授業に参加しつつ、守弥はスマホを立ち上げた。

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