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きゅっぽん。 宮司が上半身を空間から引き抜いた。 「おばあ様、これで間に合いますか?」 「さっきまで羽織っていたものなら大丈夫。 さくら、守弥の着てたものだよ」 「………はぅ…。 …あり…まと…」 「うんうん」 きゅっと掴んで毛布の中に引き込むと、深く香りを吸う。 ゆっくり、深く。 ジャケットに顔を埋めるようにしていると、乱れた呼吸が落ち着き、瞳の潤みも少し引いたように見える。 「…………しゃ…」 「ん?」 「…ごめ…しゃ…」 「謝んなくていいよ。 加減がわかんなくなるくらい好きって事なんだし」 「そうだよ。 片時も離れたくなくて、焦れ焦れしてぷしゅ~ってなっただけだからねぇ」 「うう…」 高熱が引くにつれて、恥ずかしさがどんどん強くなる。 守弥に抱きついたのを大勢の生徒に見られたのもあるが、ちゃんとギュウッとしてもらったのに守弥の気配が足りなくてパンクした自分がとにかく恥ずかしい。 「………っ」 気持ちのやり場が無くて視線が泳いだ。

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