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ふいい~、ふいい~。
『おお……、これじゃ~、これ!これよ!
指の当たりもいいし、気持ちいいのう』
美しい音色とともに、嬉しそうな声が響く。
「………………なっ、なんだこれ!
篳篥が喋ってる!」
「まさか……付喪神に!?」
『なんだ。今頃気付いたのかぁ?
道具は百年で付喪神になるんだ。
その何倍も使われてるわしらが心を持たない訳がないだろう?』
『ほんにお主らは力任せでいかんの。
この子供みたいに優しく持ってくれたら、わしらは文字通り天の音色を奏でるのにのう』
『そうじゃそうじゃ。
なんでも力任せだからいかんのじゃ~!』
「もしかして、ご尊父さまもごきょうだい方も……」
『そうじゃ。
力み過ぎてわしらの体がギシギシいってるのに、無理矢理息を吹き込むから、あんな獄卒の断末魔みたいな音しか出んのじゃ!』
『毎度毎度嫌々力任せしおってからに!
荒っぽい奴等は好かんのう』
「「………………」」
付喪神達の言葉に、守弥と時雨は絶句するしかない。
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