374 / 668

……なんと!篳篥と竜笛が付喪神化していたのかい? ばばは吃驚だよ」 「わたくしも驚きました。 まさかと……」 拙いながらも音階が整い始めた二人の練習を見ながら、ばあ様と咲良は小声で会話していた。 『ほれ、そこで指が力み過ぎとる』 『いたたたた!力任せに吹くでない!』 教授役を引き受けた篳篥と竜笛の仕事は的確で、守弥と時雨の良くない部分をズバズバ指摘する。 『おおう、そんな力任せに吹いたら音が割れるぞ』 『腹式呼吸じゃ!なんでも勢いですませようとするな。 おい、咲良とやら、見本を見せてやれ』 「あっ、は、はい!」 予備の篳篥と竜笛を持って駆け寄る。 「すーっと息を吸って、一定の強さで吹くのです」 ふい~。 耳障りの良い音色が響く。 『これじゃ、これ』 『いい音色じゃのう』 「力みすぎているのもあるのでしょうか…」 『少しはマシになっておるがの』 『力任せの癖がついておるからの。 一人一人修正していくしかあるまいて』 『根を詰めてもしかたない。 少し休んで力みを抜くのもいいかも知れんな』 篳篥と竜笛の勧めもあり、次の練習は明日になった。

ともだちにシェアしよう!