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……なんと!篳篥と竜笛が付喪神化していたのかい?
ばばは吃驚だよ」
「わたくしも驚きました。
まさかと……」
拙いながらも音階が整い始めた二人の練習を見ながら、ばあ様と咲良は小声で会話していた。
『ほれ、そこで指が力み過ぎとる』
『いたたたた!力任せに吹くでない!』
教授役を引き受けた篳篥と竜笛の仕事は的確で、守弥と時雨の良くない部分をズバズバ指摘する。
『おおう、そんな力任せに吹いたら音が割れるぞ』
『腹式呼吸じゃ!なんでも勢いですませようとするな。
おい、咲良とやら、見本を見せてやれ』
「あっ、は、はい!」
予備の篳篥と竜笛を持って駆け寄る。
「すーっと息を吸って、一定の強さで吹くのです」
ふい~。
耳障りの良い音色が響く。
『これじゃ、これ』
『いい音色じゃのう』
「力みすぎているのもあるのでしょうか…」
『少しはマシになっておるがの』
『力任せの癖がついておるからの。
一人一人修正していくしかあるまいて』
『根を詰めてもしかたない。
少し休んで力みを抜くのもいいかも知れんな』
篳篥と竜笛の勧めもあり、次の練習は明日になった。
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