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「咲良は教えるのが上手いな」 「ほえ…?」 「付喪神から習ってる時は焦ってばかりだったんだが、咲良だと落ち着いてやれる」 「そ…な、わたくしは…なにも…」 ほんのり頬が染まる。 「毛筆の時も今もそうだ。 俺を焦らせずに、すうっと馴染むように教えてくれる。 教えるのが上手いんだ、咲良は」 「………っ、ふあ…っ、あっ、わたくしは…っ」 全身が熱くてしかたない。 咲良自身は教えている意識はあまり無く、守弥が奏でる音をもっともっと聞きたくて手伝っているだけだ。 「しかめっ面の教師に教わるのと、穏やかな表情の咲良から教わるのとは全く違う。 焦らずに出来るし、心が折れない」 「……わたくしは…、守弥さまが奏でる音が美しくなるのが嬉しいだけですのに…」 チュ。 額にひとつ、口づけが落ちる。 「ん、……」 チュ、チュ。 額から瞼に口づけが移る。 それだけで、甘い吐息が零れて。 「………っ、ん……ぁ」 ツクリ。 華奢な体の中に熱が生まれる。 ねだるように守弥の服を掴むと、唇が啄まれた。 守弥がくれる口づけは、いつも咲良の中に熱を植え付ける。 甘く啄んだり、舌先で唇をなぞったり…。 それだけで、小さな熱はうねり始めた。

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