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「ん……ぅ…」
鼻に抜ける声に少しずつ甘さが乗る。
「んん…、ん……」
やわやわと唇で噛んだり舌を触れさせることを、咲良は少しずつ普通なのだと受け入れてくれるようになった。
照れてしまってなかなか自分から啄んだりできなかったが、それも出来るようになってきた。
言葉や態度で表現できない心の振れを。
深く根付いた思いの丈を表すように、甘く噛み、舌を差し出す。
「上手になったな、咲良は」
「んう…ぅ」
守弥が喜ぶから…。
ギュウッと抱き締められると、咲良の心は更に浮き立つ。
心に満たした想いが更に密度を増していく。
密度を増して、凝縮されて。
「好きだ」
「わたくし…も…」
苦しいくらいにキュウキュウする胸に手を当ててもらうだけで、凝縮された想いがもっともっと凝縮されていく。
『わたくしの中の気持ちがもっと濃くなっていったら、…守弥さまに伝わるのでしょうか…』
チュクッ。
「んうう…」
口を割り開き、熱い舌が滑り込む。
『好き…っ、守弥さまが好き…っ』
「咲良…」
「んう…っ」
そのまま二人で寝台に倒れ込むと、口づけが更に深くなった。
「好き…っ、好き…」
「俺もだ。咲良…、愛してる」
浅く、深く口づける。
有りったけの想いを込めて、何度も、何度も。
ギュウッと抱き締めあいながらの口づけ。
その何とも甘い光景は……、開け放ったドアから丸見えであった。
『あらま、ラブラブちゅっちゅ…っ!かんわいいこと…』
『あっ、こら、雲外鏡のとっつぁん!然り気無く外宮と中継繋いじゃだめだべ!』
『でもなぁ…可愛いからのぅ…。ラブラブちゅっちゅを見せたいのう…』
『日に日に可愛らしくなるからねぇ…。いやもう、尊いわ』
『うおお!はなっ、鼻血!』
『うわ、時雨が鼻血ダバダバ垂らしてうっとりしてる!』
『つっぺ!つっぺせにゃ!ばあ様に連れていくべ!』
『尊い…っ、あまあまラブラブ…尊い…っ』
『うわあああ!』
付喪神たちは自分につかないように雑巾とモップで床の血を拭き取り、式神は素早くドアを閉めて時雨を引きずって行った。
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